再婚禁止期間の撤廃・摘出推定の見直し?
マリッシュを利用されている女性の中には、離婚してから再婚を速やかにしたいと考える方も多いのではないでしょうか。
そのような女性が離婚から再婚に至るまでに気を付けることは、「再婚禁止期間」です。
今回は、なぜ「再婚禁止期間」が定められているのかを解説いたします。
再婚禁止期間とは
「再婚禁止期間」とは、1898年に制定された「摘出推定」に起因する定めであり、妻が婚姻中に妊娠した子どもを、法律上、夫の子どもと推定することです。民法772条では「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」とされています。
離婚直後に再婚・出産した場合、元夫と現夫とで推定期間の重複が発生することから、女性にのみ100日間の「再婚禁止期間」が設けられているのです。
出典:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00191.html
「再婚禁止期間」は、民法第733条で「前婚の解消又は取消しの日から起算して100日」と規定されており、離婚した日を1日目として101日目には再婚できる考えとなりますが、民法140条の「初日不算入の原則」による「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない」を考慮すると、時間的な曖昧さを省いたとしても、確実なのは離婚した日から102日目に再婚できると考えた方がいいでしょう。
摘出推定の過去・現在・未来
「摘出推定」が制定された1898年は明治31年と120年も前のことなのです。
医療技術が発達した現在では、DNA鑑定などの医学的観点から高精度で判断することができます。しかし、民法が制定された明治時代の医学では判断することができなかったため、女性が離婚後6か月間は再婚できないこととして、父親の推定がおよぶ期間の重複を避けるために、「再婚禁止期間」を制定したのです。
日本では戦前の男尊女卑の名残であるとして、男女平等やジェンダーフリーが国際的に叫ばれるなか、現代の時代背景にそぐわないという意見も多く、女性にのみ再婚を禁止する期間を設けているのは憲法に違反するとして、現在は大いに議論されています。
世界「男女平等ランキング2020(※1)」にて、日本は121位と過去最低の順位であり、ドイツ10位、フランス15位、カナダ19位、イギリス21位、アメリカ53位、イタリア76位と、日本はG7の中で圧倒的に最下位。また、中国は106位、韓国は108位で日本より上の順位となっています。
G7をはじめ先進国の多くは再婚禁止期間を廃止しており、アメリカやイギリスなど、そもそも再婚禁止期間を設けていない国もあるほどです。
※1 出典:https://www.pref.kanagawa.jp/documents/13623/ggi2020.pdf
最高裁判所は、民法による女性の「再婚禁止期間」を定めた規定を憲法違反とは判断しておりませんが、2011年の「再婚禁止期間」が日本国憲法の男女平等に反するとして女性が国に損害賠償を求めた裁判「再婚禁止期間訴訟」により、「再婚禁止期間のうち100日を超える部分については違憲」であると認められています。
今後、法改正の議論は加速し、実際に法改正される日は近いでしょう。
「無戸籍児問題」について
離婚・再婚の際に子供の戸籍はどうなるのか、説明いたします。
「嫡出の推定」で問題となっているのが、離婚後300日以内に誕生した子が元夫の子と推定されることです。元夫と離婚後の現在の夫との子であっても、子の父欄には元夫の名前を記載するよう促され、子は元夫の戸籍に入ることになります。血縁上の父親が現在の夫でも戸籍には元夫を父としない出生届出書は受理されません。
こういった場合もあり、母親が出生の届出をせず、子が無戸籍状態になってしまうケースが発生しており、離婚後300日以内の出産による出生届出数は毎年約3,000人近く存在しているとのことです。
離婚後300日以内に生まれた子は「元夫の子」?
女性のみ離婚後100日間の「再婚禁止期間」があるのは、規定による「離婚後300日以内は元夫の子と推定する」と「婚姻後200日以内は夫の子と推定しない」との期間に100日間の重複期間があるためです。
法務省はホームページにて、「無戸籍の方を戸籍に記載するための手続」のQ&Aにて「Q2.離婚後に元夫ではない男性との間の子を懐胎したのに、早産であったため、離婚後300日以内に子が生まれたというような場合にも、裁判手続きを経なければ、元夫の子という扱いになってしまうのですか。」の問いに、以下のように回答されております。
「離婚後300日以内に出生した場合でも、離婚後に懐胎したことが医学的に証明できるときには、「妻が婚姻中に懐胎した子」(民法772条1項)には当たらないので、元夫の子として扱う必要はありません。このような場合については、通達により、出生届書とともに、医師が作成した一定の様式の証明書を市区町村の戸籍窓口に提出することで、元夫を父としない届出をすることができることになっています」
出典:http://www.moj.go.jp/MINJI/faq.html
摘出制度の今後は
嫡出推定の制度の見直しについては、家庭の多様化や先に述べた国際的な男女平等・ジェンダーフリーの意識拡大などによって社会が変化しており、民法の規定が今の時代にマッチしているかの議論が先行しているため、将来の規定改善は行われる方向だが、現在の無戸籍問題を解決するためには、総合的な対策を取らなければならないということです。
離婚後、300日以内に産まれた子を前の夫の子とみなす規定を無くすことや、・離婚できないケースでも子が無戸籍にならないよう、DNA鑑定をして証拠として提出すれば出生届を受理すること、が求められています。
誰の子なのか?という繊細な問題でありますが、再婚禁止期間は、子どもをトラブルに巻き込まないためのものです。子供の権利を守ることを第一に考え、見直し案をもっと素晴らしいものにしていただきたいと思います。