養育費の問題:未払い・保証人は立てられる?|マリッシュ再出発準備室送信
離婚後の子育てを支える「養育費」。けれど、決めたはずの養育費が、いつのまにか振り込まれなくなる――そんなケースは、決して珍しくありません。
この記事では、養育費の相場・実際の支払率(未払いの現実)・あらかじめ「保証人」を立てられるのか・未払いになったときの対応を、データを交えて整理します。さらに、払う人・払わない人の傾向や、相手の親を巻き込めるのかといった疑問にも触れます。

📑 もくじ
養育費の相場 ― いくらが目安?
養育費の金額は、支払う側と受け取る側の収入・子どもの人数と年齢をもとに、家庭裁判所の「算定表」を目安に決めるのが一般的です。厚生労働省の調査では、養育費を実際に受け取っている母子世帯の平均月額は約5万円となっています。
あくまでざっくりした目安ですが、収入や子どもの人数による傾向は次のとおりです。
| 子どもの人数 | 月額の目安(ケースにより変動) |
|---|---|
| 子ども1人 | 約 2〜6万円 |
| 子ども2人 | 約 4〜8万円 |
| 子ども3人 | 約 6〜10万円 |
「払われない」という現実 ― 支払率のデータ
ここが、いちばん知っておいてほしい現実です。養育費は、取り決めても払われないことが多い。厚生労働省の調査(令和3年度)が示す数字を見てみましょう。
| 項目 | 母子世帯 | 父子世帯 |
|---|---|---|
| 養育費の取り決めをしている | 46.7% | 28.3% |
| 現在も受け取っている | 28.1% | 8.7% |
つまり――母子世帯で「現在も養育費を受け取れている」のは、わずか約3割。言いかえれば、7割以上が受け取れていないのが実情です。父子世帯にいたっては9割が受け取れていません。
払わないとどうなる? ― 支払う側の法的リスク
では逆に、支払う側が養育費を払わないと、どうなるのか。受け取る側にとっては「打てる手」、支払う側にとっては「リスク」を、正しく知っておきましょう。
まず大前提として、よくある誤解を解いておきます。
具体的には、次のようなペナルティ・リスクがあります。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| ①財産の差押え (強制徴収) |
給与・預貯金・不動産などを差し押さえられる。給与は手取りの1/2まで、将来分も継続して取られる。 |
| ②遅延損害金 | 未払い分には、遅れた分の利息(遅延損害金)が上乗せされる。放置するほど総額は膨らむ。 |
| ③間接強制金 | 裁判所が「払わなければ1日いくら」と別途お金を課すと警告し、心理的に支払いを促す制度。 |
| ④刑事罰(前科)の 可能性 |
後述の「財産開示手続」を拒否・無視・虚偽申告すると、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金。これは前科になる。 |
特に④は、誤解されがちなポイントです。「養育費の不払い」そのものではなく、「回収のための裁判所の手続き(財産開示)に協力しなかったこと」に対して、刑事罰が科されるのです。
要するに――養育費を払わないことに、ストレートな「罰」はない。けれど、回収から逃げようとすると、差押え・遅延損害金・前科という現実が待っている。受け取る側にとっては、これらすべてが「子どものために使える手段」になります。
「差押えって本当にできるの?」 ― 制度の限界と現実
ここまで読んで、こう思った方もいるはずです。「制度はあっても、本当に取れるの?」「しょせん民事の話で、結局は諦めてる人ばかりでは?」――正直な疑問です。きれいごとで終わらせず、現実の限界も書いておきます。
まず事実として、差押え(強制執行)はできます。絵に描いた餅ではありません。とくに相手が会社員なら、給与を継続的に差し押さえられるのは強力です。ただし――「相手に差し押さえられる財産があれば」という条件がつきます。ここが核心です。
⬆ 回収しやすいケース
- 相手が会社員・公務員(給与を継続差押え)
- 勤務先・口座が分かっている
- 差押え可能な預貯金・不動産がある
- 公正証書などの債務名義がある
⬇ 回収が難しいケース(空振り)
- 相手が無職・失業・困窮している
- 自営業で、差し押さえる給与がない
- 転職・退職・口座変更で逃げられる
- 財産を会社名義などに隠している
「諦めてる人が多い」のも、残念ながら本当です。理由は「制度が無意味だから」ではなく、「手続きのハードルが高いから」。相手の財産や勤務先は裁判所が調べてくれるわけではなく、自分で特定する必要があります。書類集めも煩雑で、相手が転職すれば差押えはやり直し。この手間と精神的負担の前に、力尽きてしまう人が多いのです。
そして流れは、確実に「逃げ得を許さない」方向へ動いています。前述の2020年改正(財産開示の刑事罰化・相手の追跡)に加え、2026年4月の改正民法では、新しいセーフティネットも始まりました。
- 法定養育費:2026年4月以降に離婚した場合、取り決めがなくても、子ども1人あたり月2万円を請求できる(正式な取り決めまでの暫定的な制度。相手に支払い能力がない場合は対象外)。
- 先取特権:養育費に、他の債権より優先して回収できる権利が認められた。
まとめると――差押えは「できる。ただし相手に財産があれば」。万能ではないが、無意味でもない。大事なのは、空振りしにくい状況を離婚時に作っておくこと(=次の「備え」の話)。そして、手続きの煩雑さで諦めないために、弁護士や保証サービスという”代行してくれる存在”を使うことです。
あらかじめ「保証人」を立てられる?
「借金に保証人をつけるみたいに、養育費にも保証人を立てられないの?」――これはとても自然な発想です。結論から言うと、個人の保証人を立てること自体は、法律上は可能です。
たとえば離婚時の公正証書などに、「支払う側の親(子の祖父母)などを連帯保証人とする」と定め、本人が払わないときは保証人に請求する、という形です。理屈の上では成り立ちます。
そこで近年、個人の保証人に代わる選択肢として広がっているのが、次の「養育費保証サービス」です。
代わりに使える「養育費保証サービス」
これは、民間の保証会社が「連帯保証人」の役割を引き受けるサービスです。2018年に日本で初めて登場し、自治体とも連携しながら広がってきました。
仕組みはシンプルです。
- 受け取る側が、保証会社と契約して保証料を払う
- 元配偶者からの養育費が止まったら、保証会社が立て替えて振り込む
- その後の催促・回収は保証会社が代行(相手と直接やり取りしなくて済む)
料金の目安は、初回保証料が「養育費の1ヶ月分」、その後は月額養育費の3%程度や定額といったところ。会社によって、立て替えの上限月数(12ヶ月〜36ヶ月など)が異なります。
⬆ メリット
- 未払いでも翌月から立て替えてもらえる
- 相手と直接連絡しなくていい
- 第三者の催促で未払い自体が減る効果
- 自治体によっては保証料の補助(上限5万円など)
⬇ 注意点
- 保証料の分、手取りは目減りする
- 立て替えに上限・期間がある
- 公正証書など法的な取り決めが前提のことが多い
- 支払う側の審査がある/保証会社の倒産リスク
未払いになったら ― 対応の手順
すでに未払いが起きてしまった場合。落ち着いて、段階的に進めるのが基本です。いきなり最終手段ではなく、軽いものから順に見ていきましょう。
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| ①催促・内容証明 | まずは支払いを求める連絡。内容証明郵便で「請求した記録」を残す。 |
| ②履行勧告・履行命令 | 調停・審判で決めた場合、家庭裁判所から相手へ支払いを促してもらう。 |
| ③強制執行(差押え) | 給与や預貯金を差し押さえる。最も実効性が高い。 |
最終手段の「強制執行」には、ひとつ大事な前提があります。それは、「債務名義」――つまり公正証書(強制執行を認める文言つき)・調停調書・審判書・判決書のいずれかを持っていること。口約束だけでは、いきなり差し押さえはできません。
養育費の差押えは、ふつうの借金より強力
- 給与は、通常は手取りの1/4までしか差し押さえられないが、養育費は1/2まで差し押さえ可能
- 一度差し押さえれば、将来の養育費についても継続して差し押さえられる(毎回申し立て不要)
さらに、2020年4月の民事執行法改正で、未払い養育費の回収はぐっとやりやすくなりました。前述した「財産開示の刑事罰化」に加えて、もうひとつ大きいのが相手を”追跡”できるようになったことです。
- 第三者からの情報取得手続の新設:相手の勤務先・預貯金口座・不動産などを、裁判所を通じて市区町村・年金機構・金融機関から調べられるように。相手が転職・引っ越し・口座変更で逃げても、突破口になりうる。「どこにいるか分からないから諦める」時代では、なくなりつつあります。
払う人・払わない人の傾向
あくまで傾向の話ですが、養育費が続きやすいケース・止まりやすいケースには、ある程度の特徴が見られます。
⬆ 払い続けやすい傾向
- 公正証書など、法的な取り決めがある
- 収入が安定している(正社員など)
- 子どもと面会交流が続いている
- 第三者(保証会社等)が間に入っている
⬇ 止まりやすい傾向
- 口約束だけ/取り決めがあいまい
- 相手が再婚・転職・引っ越しをした
- 収入が不安定・失業した
- 子どもとの関わりが途絶えている
ポイントは、「相手の人柄」より「仕組み」のほうが効くということ。誠実そうな人でも、再婚や転職といった生活の変化で止まることはあります。逆に、法的な取り決めと第三者の存在があると、続きやすくなる。つまり、備え方しだいで結果は変わるのです。
相手の「親」に請求できる?
「元夫が払わないなら、その親(子の祖父母)に払ってもらえないの?」――気持ちは分かりますが、ここははっきりさせておく必要があります。
原則として、養育費の支払い義務は親本人にあり、その親(祖父母)に直接請求することはできません。「裏ワザ」的に祖父母へ肩代わりを迫る、というのは基本的に通りません。
だからこそ、もし相手の親の協力が得られるなら、離婚時に「連帯保証人」として正式に加わってもらうのが、唯一の現実的なルートになります。後から巻き込むのは難しい、と覚えておきましょう。
いちばん大事なのは「先に備える」こと
ここまで見てきたことを、ひとことでまとめると――養育費は「決めて終わり」ではなく、「払われ続ける仕組み」をどう作るかが勝負、ということです。
7割が受け取れていないという現実。でも、公正証書を作る・保証サービスを使う・必要なら法的手続きをとる――打てる手は、確実に増えています。未払いが起きてから慌てるより、できる備えを先に。それが、子どもの暮らしを守る一番の近道です。
どんな道を選ぶとしても、選ぶのは、あなた自身の意思です。
次の一歩を考えるためのページを、用意しています。気になるほうから、のぞいてみてください。
▶ 離婚を検討されている方へ
別居・調停・お金のことまで。後悔の少ない選択を考えるための情報をまとめています。
▶ 離婚しないという選択
立ち止まって考えてみる時間も大切。思いとどまった人たちの体験談や考え方を集めました。
「もしも」に、先に備える
養育費は、子どもの毎日を支えるお金。
止まってから動くより、止まらない仕組みを先に。それが、いちばんの安心になります。
※本記事の統計は厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」等にもとづく一般的な解説で、執筆時点のものです。保証サービスの料金・条件は各社により異なります。具体的な取り決め・請求・手続きは、弁護士など専門家にご相談ください。