離婚後の生活費は本当に足りる?シミュレーション|マリッシュ再出発準備室

離婚後の生活費は本当に足りる?シミュレーション|マリッシュ再出発準備室



「離婚したら、毎月いくらあれば生きていける?」——頭ではわかっているつもりでも、実際に数字を並べてみると、思いのほか現実は厳しかった。そんな声をよく耳にします。

このコラムでは、子あり女性・子なし男性の2つのケースをもとに生活費をシミュレーションしながら、離婚後の家計のリアルと、知っておきたい公的支援・法的な備えを整理します。

家計とお金のイメージ
※画像はイメージです

夫婦でいると「見えにくくなる」お金の話

共働きでも専業主婦(夫)でも、二人で暮らしていると生活費は自然と分散されます。家賃は折半、食費も一つのカゴにまとめて買える。光熱費だって、一人分と二人分ではそれほど変わりません。

ところが、いざ一人になると「あれ、こんなにかかるの?」と驚く支出が次々と出てきます。多くの人が見落としがちなのが、固定費の「割り勘効果」が消えるという現実です。

カギは「固定費がまるまる自分にのしかかること」。家賃・光熱費・通信費——どれも二人分と一人分でほぼ変わらないのに、支払う人は一人になります。収入が半分になっても、支出が半分になるとは限らないのが、一人暮らしの現実です。

ケース① 37歳・子あり女性(Aさん)の場合

小学2年生の子どもを持つAさん(会社員・手取り月22万円)が離婚し、親権を持った場合のシミュレーションです。

費目 月額(概算)
家賃(2LDK・都市近郊) 75,000円
食費 45,000円
光熱費・通信費 22,000円
子どもの教育費・習い事 30,000円
日用品・衣料費 15,000円
医療費・保険 12,000円
交通費 10,000円
貯蓄(最低限) 20,000円
合計支出 229,000円
収入 月額(概算)
手取り給与 220,000円
養育費(相場) 40,000〜60,000円
児童扶養手当(目安)※ 約48,050円
収入合計(養育費含む) 約308,000〜328,000円

※児童扶養手当は所得・子どもの人数によって異なります。2026年度、子ども1人・全部支給の場合の月額は48,050円。収入が一定を超えると、減額または支給停止になります。

計算上は「黒字に見える」Aさんのケース。でも実際に頭を抱えたのは、養育費が毎月必ず振り込まれる保証がないという現実でした。

💬 Aさんの話(37歳・会社員・子ども1人)

「最初の3ヶ月はちゃんと来てたんですよ。でも4ヶ月目にぱったり止まって。子どもの習い事を辞めさせようとしたとき、泣かれて……。あのときの罪悪感は、今でも忘れられません」

養育費の「もらえない」問題

養育費の不払い問題は、日本では深刻です。厚生労働省「2021年度全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費を現在も受け取っている母子世帯は、3割に満たないのが実情です。

⚠ 養育費は「公正証書」で取り決めることが大切。公正証書(強制執行認諾文言付き)にしておくと、未払いのときに裁判なしで強制執行(差し押さえ)ができます。口約束や普通の書面では強制力がありません。離婚前に公証役場で手続きしておくことを、強くおすすめします。

ケース② 42歳・子なし男性(Bさん)の場合

妻と合意離婚した会社員のBさん(手取り月30万円)のケースです。慰謝料なし、財産分与として預貯金の半分(約150万円)を渡したところからのスタートです。

費目 月額(概算)
家賃(1LDK・首都圏) 85,000円
食費(外食含む) 50,000円
光熱費・通信費 18,000円
車のローン・維持費 30,000円
日用品・衣料費 15,000円
保険・医療費 15,000円
娯楽・交際費 20,000円
貯蓄 30,000円
合計支出 263,000円

手取り30万円に対して支出は約26万円。数字だけ見れば、余裕があるようにも見えます。でもBさんが気づいたのは、「思っていたより、ぜんぜん楽しくない」という感覚でした。

💬 Bさんの話(42歳・会社員)

「お金は回ってるんですよ。でも週末に一人でコンビニ飯を食べてると、何のために稼いでるんだろうって。離婚した後のことばかり考えてたけど、離婚した後の“毎日”を考えてなかった気がして」

二つのケースを見てわかるのは、離婚後の生活は収支の計算だけでは語れないということです。「足りる・足りない」を決める数字の前に、見落としやすい支出があります。

見落としがちな「非定期支出」

毎月の収支だけを計算していると、見えてこない大きな出費があります。

  • 引越し費用・敷金礼金(初期費用は50〜100万円になることも)
  • 家電・家具の買い揃え(共有していたものが使えなくなる)
  • 弁護士費用(協議離婚でも依頼すると数十万円かかることがある)
  • 子どもの進学・急な病気など、予期しない大きな出費
初期費用は「手元にいくら残るか」で考える。離婚後すぐに50〜100万円の初期費用が出ていく可能性を念頭に置きながら、財産分与や貯蓄の計画を立てることが大切です。

知っておきたい公的支援

ひとり親家庭を対象とした支援制度は複数あります。自分に当てはまるものがないか、確認しておきましょう。

制度 内容
児童扶養手当 ひとり親家庭に支給される手当。所得制限あり。
ひとり親家庭等医療費助成 自治体によって内容が異なる、医療費の補助。
養育費保証サービス 民間・一部自治体で、養育費の立替・保証を行うサービスが広がっています。
住居確保給付金 一定の条件を満たすと、家賃の一部を補助してもらえる制度。
大事な前提:支援制度は、所得や家族構成で受けられる内容が変わります。まずは住んでいる自治体の窓口(市区町村のひとり親相談窓口)に相談するのが、いちばん確実です。

「足りる・足りない」の前に考えたいこと

「離婚後の生活費が足りるかどうか」は、シンプルな問いのようで、実はとても答えが難しい問いです。なぜなら、「足りる」の基準は人によってまったく違うから。子どもの笑顔を守れれば足りる、という人もいれば、今と同じ生活水準を維持できないなら足りない、と感じる人もいます。

ただ一つ言えるのは、感情が高ぶっているときほど、冷静に数字と向き合う時間をつくることが大切だということです。

  • 今月、自分はいくら使っているか書き出してみる
  • 一人になったとき、削れる費用・削れない費用を分けてみる
  • 公的支援でどれくらいカバーできるか、自治体窓口に相談してみる
  • 養育費は「公正証書」で取り決める準備をしておく

どんな道を選ぶとしても、選ぶのは、あなた自身の意思です。

次の一歩を考えるためのページを、用意しています。気になるほうから、のぞいてみてください。

把握できた数字だけが、未来を守る

毎月の支出も、養育費も、公的支援も。
まずは全体を「見える化」して、自分にとっての答えを探していきましょう。

※本記事の数値・制度は一般的な傾向の解説で、執筆時点のものです。個別の状況によって異なる場合があります。具体的な判断・手続きは、弁護士・ファイナンシャルプランナーなど専門家にご相談ください。